小説の感想 「すべて真夜中の恋人たち」
川上未映子さんの小説「すべて真夜中の恋人たち」を読んだ。
中学生ぐらいの頃は読書が好きで、(とはいっても難しいものではなくて、恋愛小説やミステリーが多かったけど)、割と多くの本を読んでいた方だと思う。
けれど高校生になって受験勉強が忙しくなってから、読む冊数は大幅に減った。
ただ、高校を卒業して数年が経った今でも、読書がしたい気持ちは常にあるので、時々気なる小説を読んだりしている。
先日時間ができたので、古本屋さんに行った。そこで、「店員さんおすすめの本」の棚に並んでいたのがこの作品だった。
ジャケ買い。一目惚れだった。
橋本紡さんの、「流れ星が消えないうちに」という小説が大好きで、何度も読み返していたのだが、表紙のイメージがそれと似ていた。(結果全然印象の違う作品でした)
前置きが長くなってしまったが、実際に「すべて真夜中の恋人たち」を読んでみて。
まず、とても読みにくかった。時間がかかった。
悪い意味ではない。ゆっくりと読んで、しっかりと光景を描きたい文章が多かった。ゆっくりと想像すれば、とても綺麗な景色が広がった。
ひらがなが多く使われていたのも、気になった。
本作の主人公である入江冬子は、校閲の仕事をしている。だから、このひらがなにも意図がある、と意識せざるを得なかった。
そしてこの主人公に、私は感情移入ができなかった。仕事は丁寧で、真面目。しかし何に生きがいや楽しみを感じているのかがよくわからない主人公の生き方が、私には退屈すぎるように思えて、なぜそんな状況になってしまったのか理解できなかった。どこかで状況を変えなかったのか?と思った。
彼女の弱さ、特に、酒に頼り他人に迷惑をかけるという行為は、やっぱりどうかと思う。物語中盤以降で彼女は基本的に酒を飲んでいるが、私はそんな彼女を下に見ながら作品を読んでいた。
しかし、物語の終盤。彼女が三束さんに想いを伝える場面で、彼女が変わろうとしている部分を見て、自分には彼女との共通点があることに気づいた。それはどちらかというと、私が引け目を感じている部分、弱点だと思っている部分で、隠して生きている部分だった。
そして、そんな共通点を持つ彼女がそれを変えようとしているのを感じて、心が痛くなった。
彼女は、私のダメな部分をもう少しだけわかりやすくダメにした存在で、しかし私以上にそれを変えようとしている存在なのではないか、と思った。
そして最後に、聖が冬子に詰め寄る場面でのセリフを聞いて、私は、自分が詰められている気分だった。
私は我が身が可愛いのだ、と思った。
(この場面は、正直、刺さりすぎてかなりしんどかった…。)
振り返って、この作品は私にとって、とても読みにくくて、読み終えた後にしんどさが残る作品だった。
きっと、読む人によって感じ方は異なると思う。冬子と自分は全然違う、と感じて、しんどさなんて全く感じない人もいるかもしれない。
ただ、本作には冬子、聖、三束さん、など何人かの登場人物がいる。私は、みんな違ってみんなだめな所のある人だと思った。
そして、実は私は、聖のだめなところも持っているかもしれない、と思った。
だから、もしかすると私以外の人が本作を読んでも、誰かしらと同じだめなところ、をもつ自分に気づくのでは?とも思う。自分はだめな人間だけど、完璧に見える周りのみんなだって、きっとだめな所を持っているに違いない、と信じているから。
もし私と同じように、自分のだめなところに気づかされた人がいたら、しんどいよね〜と慰め合いながら、色んな話をしたい。
そんな妄想をしながら、自分で自分のだめなところに向き合って、これからも生きていかなきゃな〜と今はそんなことを一番に思う。
長文になってしまいましたが、読んでくれた方、ありがとうございました。